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仙台高等裁判所 昭和27年(ラ)12号 決定

抗告の理由は末尾添付の抗告の理由と題する書面記載のとおりである。

しかし、相手方中村町議会が、議長である抗告人を除名したことにより、抗告人所論のように新に議長を選挙しようとしていることについては疎明がない。尤も相手方中村町議会が抗告人を除名したことにより議長の欠けた結果となり、従つて抗告人所論の除名処分取消の訴の裁判が未だ確定しない間においても、なお新に議長を選挙し得る事情にいたるべきことは、これを知り得るところであるけれども、議長が欠けたときに直に議長を選挙しなければならないものでないことはいうまでもなく、上記の事情にあることをもつて、直に、除名処分の執行により償うことのできない損害を避けるため処分の執行を停止すべき緊急の必要がある場合に当るものということはできない。又抗告人は右除名処分が違法であることについて縷々述べているが、これらの事情は右処分の効力につきその取消を求め得るかどうかに関する問題であり、本件においてこれをもつて直に処分の執行を停止すべき事情に当るものとは認め得ない。以上により論旨はすべて理由なきに帰する。

よつて抗告人の本件申立を理由なしとして却下した原決定は結局相当であるから行政事件訴訟特例法第一条民事訴訟法第四百十四条第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 村木達夫 檀崎喜作 細野幸雄)

抗告の理由

申立人は被申立議会の議員であり且議長であつたが被申立議会は昭和二十七年一月十日の町議会に於て申立人を除名する旨の議決をなし右除名の処分は同月十一日通知を受けたが其理由は申立人が一部議員は町当局と馴合い町民多数の生活を蹂躙せんとしていると誹謗した文書を、議長の名を用いて町内各所に貼付したことは議会の品位を傷けると謂うのであるが、右申立人の前記の行為は昭和二十六年九月頃の議会外の行動であるから、被申立人は懲罰を科し得ないのみならず、右除名は被申立人を相手取り福島地方裁判所に提起してある同庁昭和二十六年(行)第一五号懲罰無効確認又は取消請求訴訟事件を有利に展開せんとして計画されたもので、地方自治法並に中村町議会々議規則に規定しある議員に対する懲罰の権限を乱用したる処分であると確信せらるゝので、申立人は右除名処分の取消請求の本訴を福島地方裁判所に提起したが、被申立人は申立人の除名により、新たに議長を選挙せんとしておるが、そうなれば申立人は右本訴に於て除名の取消の判決を得ても議長の地位を回復出来るかを保し難いので其除名の効力停止決定を申立てたのに対して原裁判所は前記の決定を為したのであるが、其却下の理由の要旨は(1)執行停止の要件は極めて厳格であること、(2)除名の決議には所謂特別決議を要するものであるから相当の納得すべき事情が存在しない限り停止すべきでないとし、申立人の前記の所為が議会の品位を傷けたものとして、除名に値するかどうかは本案を俟つて決せらるゝものであり、本件除名も二十二名中十七名の同意により、成立しているところから見て効力停止すべき理由がないとして申立人の申立を却下しておるが、議員の除名は議員の地位を失脚せしむるものであるから、慎重の上にも慎重を期し町民多数の納得すべき事情がない限り為し得ざるものであるに拘らず、被申立議会の議員の多数は議員に発案権のない都市計画福島県地方委員の改選を求める議案を突如として、提案したるも申立人に於て右提案に法律上の疑義あるため上程しなかつた処、右議案を議会に上程しなかつたことを不当として、多数議員は申立人に対し、議長不信任並びに辞職勧告の決議を為したが、申立人は種々調査の結果、右議案は議員に発案権なきものであることが確信せられたので、之れに応じなかつた、のみならず、多数与党の右の如き理不尽なる行動を反省せしむるために昨年九月頃町内各所に議長名を冠して町政上真実と確信する意見を記載した文書を貼付したものであつたが、被申立人は申立人が議長を辞職しないこと、町内に右文書を貼付したことの不当を取り上げて懲罰に附し目下御院に於て抗告中の昭和二十七年(ラ)第二号抗告事件記載の如く、次期議会から三日間出席を停止する懲罰を為したので、右懲罰の無効又は取消の訴訟が目下福島地方裁判所に繋属中であるが、右訴訟事件は被申立人敗訴の公算大なりしものを自覚した与党多数派は申立人を除名せば、右本訴は却下となるべきものと思料し、再び多数を以て申立人を除名する最悪の処分を敢行したのであるから、右は全く懲罰権の乱用である議会の品位は議員各自が議員本来の使命と責任を自覚して町民の負担に副うために最善の努力をなしてこそ維持せらるべきもので品位を傷けたるや否やは社会通念上議員としての適格を欠くが如き所為ありたるや否やによりて、決定せらるべき問題であり、申立人の前記の所為は、町政革新のためにする演説会に於ける演説と同様何等議会の品位を傷けるものでなく、寧ろ多数議員に反省を促し以て議会の品位を向上せしむるために特に議長の名を冠してなしたものであるから、除名の決議が二十二名中十七名の同意を以て為されたものであるとしても、何等の権威なき独裁的無暴なる処分であると謂わなければならない。而も前記の如く前記の所為は出席停止三日の懲罰の際其理由にせられたものを再び捉えて申立人の政治的失脚のために之れを利用することは、一事不再理の原則に反する許すべからざる処分と謂わなければならない。

斯る懲罰権の乱用による除名処分の効力を停止せずして、如何なる場合に効力の停止をなすべき特別の事情ありとなすものなりや御庁に於ては是非申立人の申立の趣旨を御検討の上除名の効力停止の御決定を賜わり度い。

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